5月11日
世間ではゴールデンウィークが終わってしまって虚脱感、という人も多いと思うが、僕の場合は「毎日が日曜日」状態なのでそれはない。それより「文学フリマ東京」が終わってしまった虚脱感の方が大きい。僕が所属している文学サークル「いよなん」は年二回の文フリ東京にあわせて同人誌を発行、頒布しているのである。
今回の「いよなん5号」に、僕は「天動説の世界」という原稿用紙30枚余りの短編を載せたのだが、実はこれはこの作品だけで独立したものではない。4号に載せた「跳ぶ男」、3号に載せた「二十四時間の逃避行」と一部登場人物が重複しており、連作長編となるべき作品の一部なのである。そしてその「長編」が、この連休中にとりあえずラストまでこぎつけたのだ。これがまた虚脱感の原因だったりもする。
僕はもともと、書きながら考えるタイプなので、きっちりプロットを固めてから書いているわけではない。「二十四時間の逃避行」を書き始めた時、続編を書き継ぐつもりはなかった。「二十四時間の逃避行」はこういう話だ。
「夫の留守中に憂愁に捕らわれてしまった『私』は、とある海辺の町に夫には秘密の『二十四時間の逃避行』に出かける。その町では沖の船に向かって男たちが担ぐ神輿が揉み合うという奇妙な祭りがおこなわれていたが、そこには――(いよなん3号もくじにつけたあらすじ)」
この「私」は由梨亜という女なのだが、別にもう一人「わたし」と表記される人物が出てくる。こちらは由梨亜にしか見えない所謂「イマジナリ」のようであり「幽霊」のようでもある存在で、やがてそれが由梨亜の親友だった美織という女らしいことがわかるという仕掛けになっているのである。
最初はこれで完結した短編のつもりだったのだが、この続きを書いて「かいやぐら」という百枚ほどの中編にして某文学賞に応募した。その際に付けた梗概は次のようなものである。
「作家である夫・風間恭平の留守中に憂愁に捕われてしまった由梨亜は、Sという海辺の町に夫には秘密の一泊旅行に出かける。その町では海の中で男たちが神輿をぶつけ合うという奇祭が行われていた。その男たちの中に夫の姿を発見して由梨亜は驚く。実はSは、彼女の親友で夫の元恋人だった美織の故郷だった。美織は六年前にこの町を襲った土石流災害で行方不明になっていたのだった。風間はこの町と美織を題材にした小説を書いて、編集者の谷内杏子に見せる。さらに、妻の由梨亜が解離性障害になっているという疑いについて話す。美織を擬した別人格が彼女の中に生まれているというのだ。その話の最中、風間の携帯に妻から電話が掛かってくる。彼女は気付いた時にはSの駅のホームにやって来ていて、そこまでの記憶がないという。風間と杏子は急いでSに向かい、岬の突端にいた由梨亜を救出するが、杏子の姿を見るなり彼女は失神してしまったのだった」
新たな登場人物として杏子という編集者の女性が出てくる。実は彼女は行方不明になった美織の従妹で、容貌もよく似ているという設定である。さらに北陸出身で大地震に被災した経験があるということが語られる。この女性についてさらにもう少しいろいろ書いてみたくなったのだ。
いよなん3号に載せた「跳ぶ男」は、
「ある朝、通勤電車を乗り過ごした男は、そのまま子供時代を過ごした町を訪ねた。ある転校生が団地の屋上から隣の棟に跳び移って見せたことを思い出した彼は、異世界に『跳び移る』という考えに取り憑かれてしまう……(いよなんのnoteに載せたあらすじ)」という話なのだが、この主人公の「ファムファタル」的存在として杏子を登場させた。
その後、小説投稿サイトの「カクヨム」に、「地球の裏側」という短編を投稿した。これは「『冠省』から始まる肉筆の手紙を受け取った杏子。それは彼女と二年を共に過ごした後、連絡を絶った圭吾からの最後のメッセージだった」というお話で、杏子の大学生時代に遡って書いている。(ただしこちらは「カクヨムコン」というコンテストの短編部門に応募した関係で一万字以内にするため、一部省略している)

今回の5号に載せた「天動説の世界」は、
「十五歳の夏、研二は妹の『アンコ』と結ばれるために『子の刻籠り』の夜に秘密の結婚式を計画する。まだ天動説の世界の住人だったあの頃、世界は自分を中心に回っているのだと信じていた。だから、妹と自分も運命であるべきだと、愚かにも思っていた(いよなん5号に載せたあらすじ。メンバーの藤白ねねさんが書いてくれたもの)」という話で、ここでアンコという愛称で呼ばれているのが杏子だ。尚、今回のアイキャッチ画像に使用しているのはメンバーの小鳥居詩乃さんが、Xでの宣伝用に作成してくれたものだ。
このように裾野が広がった杏子の物語を終結させるために70枚程度の中編を新たに書き、さらに最初の「かいやぐら」の後日譚に当たる部分を連休中にようやく書き終えたのだ。だが、今回書いた部分はこれら単独ではほとんど意味をなさない。そしてこれを含めて全部を通せば約300枚のまあまあな長編となるわけなのだが、既に部分的に同人誌や投稿サイトに発表してしまっているので新人賞用には使えない。さて、どうするかで悩んでいるところなのである。
ちなみに、いよなん2号に載せた「まれびと」の続編は「彗星の夜」の題でまとまっていて、「小説家になろう」サイトにて無料で読める。ご興味のある方は是非ご覧ください。


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