ホテルマウント富士

旅、人物

8月11日

 このところ毎年八月の初旬に蓼科に行っている。今年はその帰路、中央道を甲府南インターで降り、国道358号線(精進ブルーライン)を走り、富士五湖を周遊した。そして山中湖畔の大出山に建つ「ホテルマウント富士」にもう一泊した。いかにもプチブル趣味だし、保守の大物政治家に愛されたというところがちょっと気にはなるが、それでもここは僕が大好きなホテルなのだ。実際、建った当初は相当ゴージャスなホテルだったのだろう(今はまあまあリーズナブルだ)。富士山を見るために最高のロケーションなのはもちろん、このホテル自身の威容(異様)を誇る景観がまた魅力だ。


 前回宿泊したのはコロナの前で、夜中に富士の方向を見ると、山頂を目指すジグザグの光の列が眩しいほどだった。今年はどうかと思って見てみると、以前よりは少ないものの、山頂を目指す列は大分復活しているようだった。


 「富士山に登らない馬鹿二度登る馬鹿」という格言の通り、僕も二十代の頃一度だけ富士山に登った。山小屋で仮眠をとって、山頂でご来光を見ることが出来たのだが、高山病で割れるような頭痛に苦しんだこと、下山は須走ルートを爽快に下ったことなどは今でもよく覚えている。
 TVで、「弾丸登山」等といって無謀な登り方をする若者や外国人が最近問題になっていると言っていたが、40年前にも、Tシャツにサンダル履きの外国人は結構見かけた。バックカントリースキーなどもそうだが、彼らには “at one’s own risk”という考え方があるようで、これを「自己責任」と訳すと微妙に違ってしまう気がするのだ。まあこのあたりのことはいずれまた機会があれば考えてみたい。


 さて、ホテルに入るとあちらこちらに「60th ANNIVERSARY」と掲げられていた。このホテルが開業したのは1963年なのである。外壁は何度も塗り直しているようだが、厚化粧みたいになって、さすがに痛みは隠せない。なんとこのホテル、僕が生まれて初めて映画館で見た映画である「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」にも登場していたのである(映画中では防衛隊の臨時司令部になっていた)。
 不思議な感慨を覚えた。

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