8月16日 (8ミリ映画再生計画 つづき)
予定通りなら、来週の今日にはデジタル化された8ミリ映画が届いているはずだ。もっとも、若い人たちには8ミリ映画といっても話が通じないと思われる。実際、以前若い同僚たちに話して、まったく伝わらなかったことがあった。ただ一人分かったような顔で聞いていた三十代の同僚も、実は8ミリビデオのことだと思っていたらしい(全くの別物です)。
8ミリ映画は、フィルムによる動画である。いくつかの規格があるが、僕が使っていたのは富士写真フイルムのシングルエイトという規格のもの。マガジンと呼ばれるカートリッジに収められたフィルムで、一巻につき3分20秒撮影できる(というより、3分20秒しか撮影できない)。今の動画と何よりも違うのは、撮ってすぐにその場で映像が見られないということだ。マガジンを写真屋に持って行く。そこからラボに送られ、現像されて戻ってくるまでに一週間から十日ほどかかる。そこで初めて映像を見て、ピンボケだったり、露出アンダーで真っ暗だったり、被写体が切れていたり(あるあるです)、逆に写っていて欲しくないものが写り込んでいたり(これもあるある)することがわかるのである。もう一つ今の動画と違うのが、画像はその一本きりで、コピーすることはできないということ。だから回想シーンを作りたければ、同じ場面を二度撮らなくてはならないのだ。
撮影そのものも、今よりは結構難しい。まず、ピントは手動(当時まだオートフォーカスはない)。ズームレンズの広角側ならば手前から奥まで大体ピントが合うのだが、望遠側の時はボケてしまう。だから、撮影する前にまずレンズを最望遠にして、被写体にピントを合わせてから、引いて画角を決めなくてはならない。露出は自動だが、カメラ本体で測光するTTL方式のカメラは高価で、僕が使っていたのはレンズの外に測光部があるタイプだった。そこをうっかり手などでふさいでしまうと絞りが開いて、白飛びした画面になってしまう。もちろん手ブレ補正機能などあるはずもないので、手持ち撮影には注意。いい気になってカメラを振り回すと、とんでもない船酔い映像になってしまう。
編集するにはフィルムを切断して、スプライシングテープというテープで張り合わせる。一度切ったら取り返しがつかない。音声については、サイレントフィルムと録音可能の磁性体がついたフィルムの二種類あった。磁性体がフィルムの両側にあって、ステレオ録音できるタイプもあったが、専用の機材がないと編集できないため、あまり普及しなかった。同時録音できるカメラも売り出されていたが、内蔵マイクがフィルムの回転音を拾ってしまうので、実用には適さなかったようだ。だからセリフはアフレコである。そこに音楽や効果音をかぶせるのは難しいため、僕の場合は、時間をきっちり計って効果音とBGMを録音したカセットテープを別に作り、映写機の隣にラジカセを置いて流していた。
当時の高校生や大学生たちは、こんな苦労をして自主製作映画を作っていたのだ。今は手軽で高画質のカメラがあるし、スマホでもそこそこ撮れる。編集ソフトを使えばいろんなエフェクトを加えるのも簡単だ(実は僕は詳しくないが)。それなのに今の若者は昔ほど映画を撮らないようだ。なぜだろう。(この項さらに続く)
コメント