ふるさと納税とゆるキャラ

8月14日

 昨日の朝日新聞に「『官製通販』見直しを」として、ふるさと納税制度を批判する社説が載っていた。全面的に賛成である。と同時に、いまさら感が半端ない。なぜ今までこんな当たり前のことが広く議論されてこなかったのか。この制度のおかげで世田谷区や川崎市などは年間数十億の税収減になっている。納税は国民の義務である以上、公平でなければならないのに、税負担を回避しながら他の市民と同じ行政サービスを受けている多数の市民が存在しているのだ。恩恵にあずかっているとされる地方だって様々だ。魅力ある返礼品を用意できなければ、寄付額を流出額が上回ってしまうことだってある。「寄付が欲しければ知恵を出せ」と言うのなら、かつて「知恵を出さない奴は助けない」と言って大問題になった民主党の復興大臣と一体何が違うのか。
 これは「村おこし」と同じ構図だ。どこもかしこも村おこしで、日本中珍妙で幼稚なゆるキャラやなんとか戦隊、伝統や文化とは何の関係もない誰かの思い付きの新名物やC級グルメばかりになってしまった(すべて個人の意見です)。が、みんな生き残りをかけて必死にやっているのだ。それに加えて「ふるさと創生」期の残骸のハコモノや、バブル期にできたテーマパークの廃墟ばかり。「美しい日本の原風景」などどこにもないではないか。成功しているかに見える「風致地区」でも、古い町並みの中身は土産物屋とカフェばかり。飛騨高山の上三之町などでも、早朝の人がいない時間以外は風情など感じられないし、奇跡と言われた大内宿も、僕が三十数年前に初めて訪れた時は、ほんの数軒の民宿と商店だけだったのが、今は道の両側すべて土産物屋で、どこも似たような民芸品などを売っている。
 話は逸れるが、京都の荒廃ぶりもひどいものだった。祇園の花見小路など、安っぽい化繊のレンタル着物を着たカップルや外国人が闊歩して、一見客お断りだったはずの店が「ランチ始めました」などの看板を道に出している。「古都」を書いた川端康成がこれを見たらさぞかし嘆くだろう。
 商機を逃すまいとするのもわかるし、過疎の自治体にとっては死活問題なのだろうが、インバウンド頼みの危うさは今回のコロナで身に染みただろう。政府は、姑息なふるさと納税を早くやめ、必要なところに財政支援が届く仕組みを構築すべきだし、自治体もサバイバルゲームに乗るのではなく、観光収入に頼らずに雇用を創出する方途を探るべきだ。そしてそれができない場合、滅びていくのもやむを得ないと思う(個人の意見ですよ、もちろん)。
 「ぽつんと一軒家」というTV番組があり、なかなか面白いのだが、人里離れた所で暮らすのは実はエコではない。エネルギー効率を考えたら集まって暮らす方が断然いいのだ。人が住まなくなった集落は廃村にして、野生動物に返してあげる。そうすれば市街地に熊やイノシシが出没することも減るだろう。都市部の空き家や所有者不明の土地を利用できるような法整備をして、限界集落や災害危険地域に住む人びとに移住してもらうべきだ。だが、それを進めるのは、今のような地域代表による利益誘導型政治では難しい。国会議員は特定地域の利益代表であってはならないのだ。選挙制度の大改革が必要だろう。

1980年代後半の大内宿

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