国連女性差別撤廃委員会の勧告

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10月31日

 国連女性差別撤廃委員会が、日本政府に対して選択的夫婦別姓制度の導入を求める勧告をした。これ自体は四度目だが、最も重要な「フォローアップ項目」に指定したのは前回に次いで二度目だ。たまたまだが、この問題に後ろ向きな自民党が大幅に議席を減らしたタイミングでもあり、是非夫婦別姓の実現に期待したい。
 朝日新聞デジタルの記事で、今回の審査をまとめる「報告者」を担当したバンダナ・ラナ委員のインタビュー記事が載っていた。ネパール出身の彼女は、「根強い課題の一つは、日本文化に深く根付いた、家父長制的な観念にあると感じます。行政や法的手続きなど、あらゆる面に反映されています」と語っていた。我が意を得たりという感じ。やはり外から見るとよく見えるのだ。いまだに家制度と家父長制の亡霊がこの国を支配していることをよく理解している。
 この勧告が、「男系男子」が皇位を継承することを定める皇室典範の改正を求めていることに対し、林芳正官房長官は遺憾の意を表明し、政府として強く抗議し削除の申し入れをしたという。こういう脊髄反射的な反応はとても見苦しい。これでは人権問題を批判されて内政干渉だと抗議する中国と何ら変わらないではないか。日本政府は「皇位継承のあり方は国家の基本にかかわる事項であり、取り上げることは適当ではない」と説明したそうだが、本当にそうなら、日本という国の「国家の基本」が、国際的スタンダードでは「女性差別」だということになってしまう。非常に不名誉なことだと思うのだが。
 まあ、皇室についての僕の意見は、以前もこの欄で書いたが、男系女系に関わらず血縁による地位の継承というだけで、門地による差別を禁じた憲法14条と矛盾をきたしている。まさに「身分制の飛び地」なのである。女子や女系の継承を認めればいいというものではない。

 こういう議論になると、必ず国連なんて第二次大戦の戦勝国中心の偏った考え方のものに過ぎないとか、権威がないなどと言って国連を貶めるようなことを言う人がいる。確かに、国連は第二次大戦の連合国をそのまま引き継いだものという側面はあるだろうし、安保理が常任理事国の拒否権行使のために機能不全に陥っているのも確かだ。ロシアとウクライナの戦争や、イスラエルとパレスティナの紛争を止めることも全くできていない。
 だが、女性差別撤廃条約以外にも、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約、障害のある人の権利に関する条約などを作ってきた功績を否定することはできない。

 話は変わるが、小池百合子東京都知事は、三選の際の公約の一つに「江戸の文化、財産を世界遺産にする」ことを掲げた。この世界遺産を選定するのはユネスコ(国際連合教育科学文化機関)である。一方で東京都は、このユネスコが同じく国連の機関であるILO(国際労働機関)と共同で出している、いわゆる「セアート勧告」を無視し続けている。これは、東京と大阪で、卒業式などの式典で「国歌斉唱時に起立しなかった」教職員が処分されてきたことに対し、国連の専門機関が「起立や斉唱を静かに拒否することは、職場という環境においてさえ(略)市民的権利を保持する個々の教員の権利であり、消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰は避けなくてはならない」と勧告したものなのだ。
 勧告は無視しておいて、自分たちに都合のいい時だけユネスコ(国連)を頼るのですか。

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