占星術への疑義

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12月23日

 朝起きてTVをつけると、「今日の○○座の運勢は…」などとやっている。占いの類を信じてはいないのだが、悪い運勢だと言われるとやはり気分は良くない。今の日本で自分の星座を知らない人はほとんどいないだろうが、どうしてその星座なのか深く考えたことのある人は意外に少ないのではないか。誕生日に空を見上げて自分の星座を探すなんて人は論外だが…。
 なぜ論外なのかわからない人のために簡単に解説する。星座を構成する天体は非常に遠くにあるため、地球上からは天球に張り付いているように見える。それに対して太陽など地球に近い天体は固有の動きをする。太陽の場合は、天球に張り付いている星座の中を西から東に移動し、一年で一周する。その軌道を黄道と呼んでいる。今日12月23日はやぎ座なので、太陽は黄道上のやぎ座にあるはずだ。つまりやぎ座は昼間の太陽の周りにあり、日没と前後して沈んでしまう。だから、誕生日に誕生星座を見るのはほぼ不可能なのである。
 だが、これはあくまで「タテマエ」である。誕生星座がそれほど正確なものでないであろうことは、簡単に想像がつく。占星術では、春分点(春分の日の太陽の位置)を起点に、黄道を三十度ずつ12等分して12の星座に割り振っているが、実際の星座の大きさはバラバラだからだ。ここでいう大きさとは、例えばカシオペア座のW型のような、星が作る図形の大きさのことではない。天文学では全天を88の大小さまざまな星座の領域に分けている。そのおかげで新しい天体が発見されても、すぐに何座に帰属するか決められるのである。もっとも、ここで重要なのは星座の大きさよりも、それぞれの星座内を通過する黄道の長さである。星図で見ると、さそり座は大きい星座なのだが、黄道はさそりの頭のあたりをかすめるだけで、隣のへびつかい座の方により長く通っている。そう、黄道は実際には12星座に加えて、へびつかい座も通過しているのである。
 もう一つの大きな問題として、「歳差運動」による春分点の移動がある。これは地球の自転軸が、コマが首を振るように動く運動のことで、これにより北極星の位置も変わっていくことはよく知られている。この影響で占星術が始まった頃はおひつじ座にあった春分点が、今はうお座になっているのである。占星術師は、天文学上の星座と占星術のサインは別のものだと説明するが、僕には苦しい言い訳に思える。そもそも黄道上に12の星座があったことから占星術が始まっているのだろうし、占星術、星占いという以上、実際の星座と離れてしまっては意味がなくなるのではないだろうか。
 ご記憶の方もいると思うが、前世紀の終わりごろ、13星座占いというのがちょっとしたブームになった。これは春分点を現在のうお座に取り、へびつかい座を含む13星座の領域を黄道が通過する長さに合わせて割り振ったものなのだが、結局は定着しなかったようだ。その割り振りは提唱者によって若干違うが、一例をあげると次のようになる。

  うお座   3月11日-4月18日      おひつじ座  4月19日-5月13日
 おうし座   5月14日-6月20日       ふたご座  6月21日-7月19日
  かに座   7月20日-8月19日         しし座  8月20日-9月15日
 おとめ座   9月16日-10月29日      てんびん座  10月30日-11月22日
 さそり座   11月23日-11月29日     へびつかい座 11月30日-12月17日
  いて座   12月18日-1月18日        やぎ座  1月19日-2月15日
 みずがめ座  2月16日-3月10日
(占星術師マーク矢崎の説による。ウィキペディア「13星座占い」より。尚、ウィキペディアには他の分け方も記載されている)

 どうやら、今日12月23日の太陽はやぎ座ではなく、いて座にあるようだ。そして9割近い人の誕生星座は間違っていることになる。もっともこの区切り方が天文学的にどこまで正確か、僕には判定できないし、1995年発表とあるから、今は少し変わっているかもしれない。歳差運動は今も続いていて、72年で角度にして1度、太陽の位置は動いているのだ。星座の境界上では、厳密には生まれた時間によっても変わってくる。
 それはさておき、天文学的に正しい星座をもとに占った結果ならお前は信じるのかともし問われたら…。答えは勿論「否!」である。僕はそもそも占いの類を全く信じていない。だったら誕生星座などどうでもいいではないかと言われればそれまでの話ではある。

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