3月7日
日曜日の朝、BSNHKでウルトラセブンの最終回を、何十年ぶりかで見た。好きな実相寺昭雄の作品や、「ノンマルトの使者」などはDVDでも持っていて、何回も見ている。「セブン」に限らず円谷作品は、一本ずつの独立性が高く、出来不出来の差も大きい。この、「史上最大の侵略 後編」は「ノンマルト…」の満田かずほ(漢字はのぎへんに斉)が監督している。感動的な話ではあるのだが、子供心にも納得がいかなかったところがあった。
改めて確認してみた。まず冒頭、瀕死の重傷を負ったダンが本部から脱走する。理由は「レントゲンを撮られると、宇宙人であることがわかってしまう」からだという。だが、地球防衛軍の隊員が、これまでにレントゲンを含むメディカルチェックを受けたことがないなんてことがあるのだろうか。「第四惑星の悪夢」では宇宙ロケットのパイロットもやっているのに。
この後はダンと、ウルトラ警備隊のストーリーが並行して描かれるが、それぞれの時間の流れ方がどうにも釣り合わない。ダンは通りかかったアキオ少年とその姉に助けられ、さらにその家からも逃げ出して、アキオ少年の「秘密基地」に行く。その途中、ラジオの野球中継が聞こえている。「狙われた街」にも同じような演出があり、満田は実相寺をかなり意識していたのではないかと思う。
その頃、地球防衛軍本部は敵の攻撃を受ける。ソガとフルハシが円盤と交戦するが見失ってしまう。指令室のモニターに捕虜となったアマギが映り、地球防衛軍が全面降伏しなければ、世界の主要都市を地底ミサイルで攻撃するという。長官は首脳会議を招集して返事を遅らせようとするが、攻撃は始まり、モスクワ、ロンドン、パリ、ニューヨークが次々壊滅する。次はいよいよ東京だということで、街はパニックになってしまう。これがすべて、ダンがアキオ少年と過ごしている間に起こるのだ。ゴース星人の技術力がどれほどのものかわからないが、そんなに短い間に、地底ミサイルが世界の各都市に到達できるとは考えにくい。また、群衆のパニックシーンは明らかに日中だが、ダン側では夜だ(各都市の破壊と避難する群衆のシーンは東宝映画「世界大戦争」からの流用だそう)。アキオ少年の家のあたりは平穏そのもの(東京ではないのだろう)、野球の試合は無事終わったのだろうか。
ウルトラ警備隊が敵の基地を発見し、地底戦車マグマライザーに時限爆弾を積んで攻撃することになる。アマギを救出する時間の猶予はない。それを知ったダンがセブンに変身しようとするところに、アキオ少年から知らせを受けたアンヌがポインターに乗って現れる。ダンはアンヌに自分がウルトラセブンであると告白するが、その間にも敵基地への攻撃が始まっている。ダンはアンヌを振り切ってセブンに変身、アマギを救助に向かう。爆発する基地からアマギの入ったカプセルを救い出すと、そこにウルトラ警備隊が駆けつけてくる。再び姿を現した怪獣と闘うセブンを見て、アンヌが「ウルトラセブンの正体は私たちのダンだったのよ」と言う。だが、どうしてここにアンヌがいられるのか。ポインターは空は飛べない(ホバリングはできるが)。ダンと別れてから本部に戻っても、警備隊の出動に間に合うはずはない。一人で後を追ったにしても到着が早すぎる。
これらが、僕の違和感の正体だった。子供向けの番組に細かいことを言うなというかもしれないが、細かいことは大事である。それこそうろ覚えだが、昔見たサンダーバードではロケット機の1号と、コンテナ輸送機の2号ではスピードが違うので、まず1号が現地に先着して、調査して指示を送る。すると2号から、「あと〇分で到着する」と無線が入る。そういう細かいところが楽しかった。子供向けだからと言ってディテールをないがしろにすると、それこそ「子供だまし」になってしまう。
あらためてDVDで「狙われた街」を見てみた。脚本は同じ金城哲夫だが、冒頭の女性が暴漢に襲われている場面から、倉庫街の夕陽のラストまで、全く間然するところがない。実相寺昭雄と言えば極端なクローズアップや地を這うようなローアングル、超広角レンズや移動撮影など、とかく奇矯な映像ばかりのように言われるが、この作品は(もちろんそういう特徴は随所にあるが)非常に丁寧に作ってあるのが分かる。フィルムの消費量も他の作品よりは多かったのではないだろうか。実相寺は「子どもはよい物を見分けます」と何かのインタビューで言っていたがその通り、これは傑作である。
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