僕が好きな筒美京平①

7月17日

 昨日、ネットで注文していた「筒美京平SONG BOOK」が届いた。買うかどうか迷っていたが、「筒美フリーク」を自任する以上、やはり聴いておかねばと思ったのだ。筒美のコンピレーションアルバムは2007年にも一度作られていて、そうそうたる顔ぶれが筒美作品をカバーしていたのだが、聴いた僕の感想はといえば、「やはり、オリジナルに優るカバーはないなあ」だった。これは何も僕が原典至上主義者だからというだけではない。筒美の音楽はイントロからエンデイングまで、歌唱の合間に入る楽器の音までトータルで作り込まれたものなので、アレンジを変えると全くの別物になってしまうからだ。
 で、今回のアルバムの印象を一言でいえば「そんなに悪くもないな」であった。前回は筒美がまだまだ元気な頃だったから、参加したミュージシャンも筒美に挑戦する気持ちがあったのか、かなり大胆な改変が加えられた楽曲もあった。今回はおとなしめというか、筒美へのオマージュの気分に満ち、全体に曲を生かすアレンジがなされているように思える。07年版も今回も収録されているのは12曲。そのうち「人魚」「木綿のハンカチーフ」「ブルーライト・ヨコハマ」「また逢う日まで」「魅せられて」「さらば恋人」と、半数の6曲が共通している。筒美のキャリアの上で画期をなす作品ということなのだろうが、これではあまり新味がない。あえてこれらを外し、あまり知られていない作品を入れるという手もあったのではないか。また、南沙織・郷ひろみ・野口五郎らの曲が選ばれていないのも残念。「サザエさん」は要らないだろう。
 個人的に一番注目していたのは「シンデレラ・ハネムーン」。中でも3コーラス目の、歌唱とオーケストラの掛け合いになっているところなど、どう料理してくれるのかと期待していたのだが、さらりと流していてちょっと肩透かしだった。また、「人魚」の出来がとてもよく感じたのは、おそらくNOKKOのオリジナル版のアレンジが、いい悪いは別として、あまり曲を生かしていないと感じられるからだろう。歌もLISAの方が数段上手いし(あくまで僕個人の意見です)。
 TVが多チャンネル時代になり、中高年層向けと思われる懐メロ番組が日常的に放送されるようになってから、筒美を特集する番組もよく見かけるようになった。だが、そのあまりにステレオタイプな語り口にはいささか違和感を覚えていた。一つは「『魅せられて』から『サザエさん』まで、あの曲もこの曲も筒美京平」などと言い、「あまりにも多作で作風に個性がなく、しかも表舞台に出ないので、実は筒美京平という人物は実在せず、複数の作家による共同ペンネームだという説があった。」などという話。もう一つは、「ヒット以外には一切興味なし、ヒットの鬼筒美京平」などと言い、いい曲よりも売れる曲を作ることだけに執念を燃やしていたなどとするもの。業界の人や一緒に仕事をした経験がある人までがそういうことを言う。僕はもとより音楽は素人だし、市井の一ファンに過ぎないのだが、聞いていて「そこはちょっと違うぞ」と思うことも多いのである。この際、そのあたりを少し語ってみたいと思う。(この項続く)

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