悲しき「帰ってきたウルトラマン」①

8月21日

大特撮展にて

 庵野秀明は「帰ってきたウルトラマン」が好きだと、何かで読んだか聞いたかした記憶がある。そういえば、彼がプロデュースした、東京都現代美術館の特撮展でも、「帰ってきたウルトラマン」の特撮シーンばかりをマルチスクリーンで映すコーナーがあった。だが、僕にとっては、この「帰ってきたウルトラマン」は何とも微妙で、ちょっと苦い作品なのだ。
 この番組が放映されたのは1971年、僕が小学校4年生の頃である。同じ年に「仮面ライダー」が始まり、同級生たちはみなこちらに熱狂していた。だが、僕は七歳年上の兄の影響で、幼い頃から英国の「サンダーバード」や、日本の「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「怪奇大作戦」などの円谷特撮作品を見てきたから、「仮面ライダー」は幼稚に思えて、どうにも乗れなかった。「帰ってきたウルトラマン」の方は、なにせ「怪奇大作戦」以来、まる二年を経てようやく始まる新シリーズなので、わくわくしながら待っていたのだった。
 いよいよ第一話が始まると、まずは最新の光学撮影を使ったオープニングタイトルバック。すぎやまこういち作曲の主題歌もカッコよく、「怪奇…」で牧さんを渋く演じていた岸田森も出てくるし、冬木徹の音楽(例のワンダバダのスキャット)もいい。MATのメカのデザインもシンプルでスマートだし……。もう大興奮であった。だが、回を重ねるうち、なんとなく以前の「マン」や「セブン」ほどには、のめり込めない自分に気がついたのである。
 「マン」や「セブン」は科特隊やウルトラ警備隊の世界だけを描いていたのだが、今回のヒーロー郷秀樹(郷ひろみ+西城秀樹!)は、もとレーサー志望の若者である。メカニックで親代わりでもある健(岸田)、その妹で恋人のアキ(榊原るみ)、弟で小学生の次郎の坂田三兄弟との家庭的な交流も描かれ、郷の成長物語にもなっている。今回のウルトラマンは、変身するためにベータカプセルやウルトラアイのような道具は用いず、郷の意志とウルトラマンの意志が一致した時に初めて変身できるという設定。最初のうち、功を焦る郷は空回りするばかりでなかなかウルトラマンになれない。その上、MATの古参隊員との対立なども描かれる。一話23分にいろんな要素を詰め込み過ぎて、どうにも消化不良になっていたのだ。初めの頃の怪獣が、恐竜型のオーソドックスなものばかりで魅力に欠けていたという指摘もある。ただ、そうは言っても回を重ねるにつれ、少しずつ面白くなってはいたように思う。今回は特撮に特に力を入れると放送前からも宣伝されていて、例えばミニチュアセットの縮尺を揃えるなど、よりリアルを目指すなどと言われていた。実際、津波怪獣シーモンスとシーゴラスの回などは、確かに迫力ある特撮だった。
 僕は知る由もなかったが、実はこのころ、ウルトラマンはもう一つの敵と戦っていたのであった。それは「視聴率」である。怪獣を出すだけで高視聴率が取れる時代は終わっていたのだ。そして、てこ入れのために作られたのが、第18話「ウルトラセブン参上!」。宇宙怪獣ベムスターに苦戦するウルトラマンのもとに、前作のヒーロー、セブンが現れ、新しい武器「ウルトラブレスレット」を届けるというものであった。(この項続く)

コメント

  1. エイロフ より:

    アティーカ通信、開通おめでとうございます! フットワークが軽いですね。私もがんばりたいと思います。

    • 酔生夢死 より:

      よたよたです(笑)もっとかっこよくしたいけど、今の僕のスキルではこんなもんです。

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